東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)10号 判決
一 ノズル出口の設置箇所について本願発明と先願発明との間に原告の主張するとおりの構成上の相違があることは、当事者間に争いがないので、このような構成の相違に伴い、重要な作用効果の相違があるかどうかについて検討を加える。
1 らせん翼の過熱防止
本願発明においてガスタービンをも発明の対象としていることは、当事者間に争いのない本願発明の要旨において内燃タービンが含まれていることから明らかである。そして成立に争いのない甲第一三号証の三(本願明細書)によれば、その発明の詳細な説明に「第3図の場合は、ノズルとは別個に更に外筒(1)ならびに(2)の一方から作業する媒体を圧入してらせん翼を駆動回転させて動力部分を得る方法を組合したものであつて主としてガスタービンのタービンに用いるものとす。」(四頁一〇行から一四行)と記載されていることが認められるから、本願発明が内燃タービンすなわちガスタービンとして用いられるときには、外筒の一方から高温高圧の燃焼ガスを流入させる構成をとることが明らかである。また前記本願発明の要旨および前記甲第一三号証の三によれば、本願発明は、ノズル出口をらせん翼の斜面部に設けるという構成を採用しており、明細書の詳細な説明においても「らせん翼内に設けたノズル出口よりらせん翼の正面側に排出した空気は、高熱高圧のガス体とらせん翼面との中間に介在してらせん翼の過熱を防止する効果を生む」(五頁三行から七行)、「原動機の起動力を含む出力を増加してその性能を向上せんとする」(二頁八行から九行)と記載されていることが認められるから、本願発明をガスタービンとして用いた場合には、ノズル出口から噴出する水蒸気や圧縮空気のような作動流体がらせん翼斜面の表面を被覆することによつて、別に外筒入口側より圧入される高温高圧の燃焼ガスが直接らせん翼に接触するのを避けることができ、らせん翼の過熱を防止できるのであつて、この結果外筒内に圧入する燃焼ガスの温度を従来のものに比較して高温にすることができ、ガスタービンの効率を高めることができるものと認められる。
一方成立に争いのない甲第四号証の一(先願発明の特許公報)によれば、先願発明においては、ノズル3内にある蒸気と外筒6および6´に別個に圧入される高温高圧のガス体とがらせん翼1および1´の金属板を境にして熱交換を行なうから、らせん翼の過熱防止が可能であり、したがつて高温のガス体を用いることができることが認められる。しかしながら、先願発明においては、らせん翼は直接高温の燃焼ガスにさらされることが避けられないので、らせん翼の過熱防止効果ひいてはガスタービンの効率において、本願発明の方がはるかに優れているということができる。
2 耐熱材料の使用範囲の拡大
本願発明をガスタービンとして用いた場合には、らせん翼の過熱防止効果において先願発明のものよりはるかに優れていることは前述のとおりであるから、その耐熱材料の使用範囲を先願発明の場合より更に拡大できることは当然のことである。そしてガスタービンの分野において、耐熱材料の開発あるいはその使用範囲の拡大が大きな技術的課題とされていることを考慮すると、本願発明のこのような作用効果は到底無視することができない。
3 出力増大
前記甲第一三号証の三によれば、本願発明においては、ノズル出口をらせん翼の斜面部分に開口させてあるから、このノズル出口からの作動流体の噴出は、これを遮るものがなく、外筒内におけるらせん翼の回転位置に関係なく常に一様であり、この作動流体の噴出にもとづく反動により回転させられるらせん翼の運動は常に一様連続的であることが認められる。これに対し、前記甲第四号証の一によれば、先願発明においては、ノズル出口がらせん翼の外周に開口しているから、ノズル出口が外筒側にあるときは外筒内壁にその出口が遮られて作動流体は噴出せず、これが噴出するのはノズル出口が外筒内共通弦面空間にあるときのみであるから、作動流体の噴出が間けつ的となることが認められる。したがつて、作動流体の噴出が常に一様な本願発明の方が、作動流体の噴出が間けつ的である先願発明に比し、出力が大きくなることは明らかである。
この点について被告は、ノズル出口からの作動流体の噴出の効果について相手側らせん翼に対する作用のみに着目して本願発明と先願発明との間に差違がないと主張するが、前記甲第一三号証の三および甲第四号証の一によれば、本願発明も先願発明もともに、ノズル出口からの作動流体の噴出にもとづく反動を利用して、まずらせん翼自身を回転し、更にその作動流体を相手側らせん翼にも吹きつけてその回転力を助長するようにしたものであつて、前者の作用が主たる作用であり、後者の作用は副次的な作用であるといえるから、被告の主張はこの副次的作用のみに着目したもので失当である。そしてこの作動流体の噴出にもとづく反動を利用して、らせん翼自身を回転するという主たる作用において両者を対比すると、前述のとおり本願発明の方が引用例に比し、出力増加の点で顕著な相違があることを否定することはできない。
4 相手側らせん翼の出力増大
本願発明および先願発明のように、ノズルから噴出する作動流体を相手側らせん翼に吹きつけて、その回転力を助長しタービンとしての効率を更に向上させようとする場合には、相手側らせん翼の回転方向と同方向に作動流体を指向させることが必要であつて、このようにするには、ノズル出口の方向を並列する両らせん軸の共通内接線方向に向け、共通外接線方向には向けないようにしなければならない。そして多数のノズル出口からの噴出作動流体をして、なるべく多く前記内接線方向に指向させるには、ノズル出口と相手側らせん翼との間の距離が大きいほど有効である。このような観点からみると、本願発明では、ノズル出口がらせん翼の斜面に開口しているから、このノズル出口と相手側らせん翼との距離を比較的大きくすることができるのに対し、先願発明においては、そのノズル出口はらせん翼の外周面に限られるので、相手側らせん翼との距離は必然的に小とならざるをえず、この結果本願発明は先願発明と比較し、噴出作動流体をしてより多く相手側らせん翼の回転方向と同方向に指向せしめて、その回転力を増大させることができるように構成することが可能であるといわなければならない。
したがつて、本願発明が被告主張のように作動流体の噴出方向を構成要件として限定していなくとも、先願発明と比較し、より多く相手側らせん翼の出力を増大するように構成することが可能である以上、このような相違も作用効果上の相違として看過することはできない。
二 以上検討したとおり本願発明と先願発明とは、その構成上の相違にもとづき、前記のとおり作用効果において顕著な差違があるから、この構成上の相違は単なる設計変更の域を超えており、両者は別発明を構成するといわざるをえない。したがつて、両者を同一発明と誤認した審決は違法であつて取消を免れない。
よつて原告の本訴請求は正当であるから認容する。
〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
らせん翼内に設けたノズルの出口を、該らせん翼側面部分に設けたことを特徴とするノズル出口をらせん翼側面に設けたらせん比翼にならう輻流かたぶく車を用いた内燃タービン、蒸気タービン、空気原動機、積算流量計、流体変速機